大森理論

OOMORI−Theory

ウト・イン・アウト【Out-In-Out】

 新しい題目はなぜコーナーはアウトインアウトで走るのかです。
 一般的に知られているアウトインアウトの走り方と実際に行われているアウトインアウトの走り方が異なることに疑問を感じたため今回の内容を取り上げることしました。
ということで今回は

 「なぜコーナはアウトインアウトで走るのですか?。
また、どのように走るのが正しいアウトインアウトの走り方なのですか?」

 という質問を受けたと仮定してその疑問に答えていきたいと思います。
  ※今回の理論はあくまでも僕個人の説であり、何かの書籍等に書かれていたものではありませ    んので正しいかどうかの保証はありません。一般的に知られているアウトインアウトの目的は    次のようなものです。

 コーナの半径を大きくとりコーナリング中のスピード高くする為。

 ぼくも数年前まではこの説を信じてきました。
 これは半径r(m)のコーナを横加速度a(m/s2)で走る場合の速度v(m/s)が式1で示されることに起因しています。

    v=√(a×r)・・・式1
    式1ではコーナ半径rが大きければその分高い速度で走行できることがわかります。

 計算例:半径30mのコーナを最大横Gが1Gの車で走る場合のコーナ中の速度を求めよ。

   1Gは9.8(m/s2)であるので、
    v=√(9.8×30)=17(m/s)=61(km/h)

 っがしかし、色々と計算を行った結果、本当の目的は違うことに気がつきました。
 計算の詳細は面倒なので割愛しますが、本当の目的は

加減速ができない状態の区間を短くし、かつ走行距離を短くする為 

です。

加減速ができない状態とは横方向にタイヤのグリップを使いきっている状態のことであり、コーナをその車が発生可能な最大横加速度が生じる速度で走っている状態のことを指します。

 と書いてもいまいちわかりずらいので場合別に図で解説します。




1)図−1のように車速及びタイヤグリップに対しコーナの半径が大きい場合
 この場合、インベタをアクセル全開で走れるのであれば当然それが一番速いのは言うまでもありません。(r1のライン)  インベタで走ると横加速度がタイヤのグリップの限界を超えてしまう場合は半径を大きくして、すなわちアウトインアウトのラインをアクセル全開で走ります。(r2のライン)
 図−1の場合は加減速のできない区間を短くする=全てをアクセル全開(加速のみ)で走るとなり、走行距離を短くする=なるべくインベタで走るとなります。このようなコーナでは全ての区間を加速して走行できるのでどちらの走り方で走っても違いはありません。

2)図−2のようなヘアピンコーナの場合ヘアピンコーナへの進入速度が極端に遅く、かつタイヤグリップが極端に大きく、かつ加速力が極めて小さい場合。
 図−1の場合と同じ走り方となるので、割愛します。ここでは進入スピードは十分に速く、タイヤグリップは普通で加速力も普通以上の場合について考えます。

 ”加減速ができない状態の区間を短くする”為には・・・
 @ラインのようにコーナへ
はなるべくアウト側から直線的に進入し(a〜bの区間)、インベタで走って(cの区間)アウト側へ向かって直線的に加速します。(d〜eの区間)加減速のできない区間を短くするためにはAのようなラインも考えられなくもないのですが、このラインではかつ走行距離を短くするを満足できないのでこの場合は当てはまりません。また、全てインベタで走るとアウトインアウトで走った場合に対し走行距離は短くなるものの、加減速ができない状態が長くなってしまうのでこれも当てはまりません。すなわち図−2のようなヘアピンコーナではアウトインアウトで、より直線的に加減速を行い、クリッピングポイント付近はインベタで走るという走り方となります。

 これに対し、コーナリング中の速度を高くする為には・・・
コーナ半径を大きくとることが必要なのでBのようなラインとなります。Bのようなラインではコーナリング中は常に横方向にタイヤのグリップを使いきっているので、一切加減速はできません。@とBの走り方でのコーナ通過時間を計算すると、普通の車の場合必ず加減速のできない区間を短くする走り方の方が通過時間が短くなります。

以上でだいたい今回の意図するところがわかってもらえたと思うのですが、この理論を実践する上で極めて重要なところがあります。それは減速についてです。この走り方をした場合、図−2のようなヘアピンではコーナ中の最低速度はコーナ内側の半径で決まります。

  (最大横加速度を1gとすればvc=√(rc×1))

 ということは誰が走っても最低速度は変わりません。となれば速く走るためには、最低速度で走る時間を短くしつつ、最低速度まで減速する時間を短くすればよいことになります。
 図−2のヘアピンコーナではクリッピングポイント付近が最低速度になる部分なので、その直前で減速すればよいわけです。(aの区間だけでなくbの区間でも積極的にブレーキングするということ)

 がしかし、実際にはbの区間ではすでにコーナリングを始めているのでフルブレーキングをすることはできません。そこで仕方がないので止むを得ずブレーキを緩めます。すると、横方向にもグリップ力を使えるようになりコーナリングができるようになります。

 なにが重要なのかわからなかったと思うので改めて書くと、

   車を曲げる為に止むを得ずブレーキを緩める

 ここが重要です。
 一般的にコーナリングを始めるときにブレーキを踏んでいるのは荷重移動を使って車を曲がりやすくする(向きを変える)為なのですが全然目的が違います。本当はコーナリング中もブレーキを目一杯踏み続けていたいのですが、車が曲がるために必要な分だけブレーキを緩めるのです。

 今回の加減速のできない区間を短くして、かつ走行距離を短くするという走り方には効果がある場合とない場合があります。

効果のある場合
 1)タイヤのグリップが低い(一般のスポーツタイヤは摩擦係数が1前後なのでこれを基準としたと   き)

 2)エンジンパワーが高く、車重が軽い(加速性能に優れている)

  3)ブレーキング性能が高い(特に曲がりながら減速する性能が高いことが重要)

 効果がないのは1)〜3)の逆の場合です。
 本来であれば、これにコーナの半径と旋回角度及びコース幅という3つが影響するのですが、いまいちわかっていません。(タイヤのグリップと加速性能については計算して影響を算出しました)

 例えばF1のエンジンパワーが100psくらいしかなかったとしたら、1)と2)に反するのでコーナ半径を大きくとる走り方の方が速くなりますが、実際のF1はタイヤの摩擦係数が(空力込みで)4くらいと高いので1)には反するものの2)と3)に当てはまるので加減速ができない状態の区間を短くする走り方の方が速く走ることが可能です。

 というところで今回は終わりたいと思います。
 直角コーナや複合コーナはどうすればいいんだ!という意見が多いと思いますが現在研究中です。ただ基本は同じはずなので色々試してみてください。

 次回はこの考え方を元に初心者の陥りやすい状態とその解決方法について考えてみたいと思います。

以上!


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